研究レポート

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日通総合研究所が独自に行ってきた調査・分析の研究レポートを公開しています。

ロジスティクスレポート No.12

東シベリアの交通・物流インフラ事情
~河川船舶・鉄道・トラック・航空輸送の実態を報告する~

  • 東シベリア地域は豊富な天然・地下資源の産地であり、同地から日本へは木材・石炭・レアメタルが輸出され、日本からは建設機械等が輸入されている。現在は日本投資による油田開発も進められており、今後は重要な貿易相手地域になると予想される。
  • 自然環境が厳しい同地は、鉄道や道路など交通インフラは南部の限られた地域にのみ整備され、北部の永久凍土地帯は河川を利用した船舶輸送が主力となる。生活物資や開発資源は大半が河川船舶で輸送される。
  • 河川が凍結する冬季は船舶輸送を行えない。一方で凍結した河川や湿地帯を平坦にならすことで「ウインターロード(冬の道)」を建設し、夏場は途絶する地区へもトラック輸送が可能となる。東シベリア地域の冬季ならではの輸送方法である。
  • 通年利用できる貨物輸送手段は鉄道とトラックである。広大なシベリア大地においてトラック輸送は距離的な限界もあり、主力輸送は鉄道が担っている。新たな鉄道網の建設計画も着実に進められている。
  • 物流は製品が完成したら市場へ送るという単純な仕組みで運営されており、日本的なロジスティクス意識は浸透していない。物流センターは存在せず、流通上での在庫保管や加工、出荷に合せた製品調達は実施できない。現在、政府においてはロジスティクスセンター構想を掲げており、今後の物流インフラ整備が待たれる。
1.東シベリア地域の地勢

ロシアを構成する7つの連邦管区のうち、ウラル、シベリア、極東の3つの連邦管区を合せた地域が広義のシベリアである。地勢上はウラル山脈の東側になる。本レポートにおける東シベリア地域とは、このうちクラスノヤルスク地方、イルクーツク州、サハ共和国を合せた地域を示す。
この地域は亜寒帯の広大なタイガで、冬期の気温は非常に低い。より高緯度な地域は地衣類主体のツンドラとなり、樹木は生育せず、地下には厚い永久凍土層が広がる。天然及び地下資源が豊富な地域である。

図1.東シベリア地域の範囲
図1
2.東シベリアの輸送ネットワーク

エニセイ川とレナ川が南から北に向かって流れ北極海に注ぐ。この2大河川とその支流が東シベリア中北部の唯一の輸送手段となる。ただし河川輸送は、冬季は河川が凍結するため5月下旬から10月下旬までしか行えない。冬季は凍結した河川を道路に仕立て、自動車輸送が代替する。  東シベリア南部は鉄道と自動車輸送が担う。首都モスクワから極東のウラジオストックまで延びるシベリア鉄道が東西に走り、途中のタイシェットから第2シベリア鉄道と呼ばれるBAM鉄道がシベリア鉄道に平行して走る。これら鉄道と2大河川は、クラスノヤルスクでシベリア鉄道とエニセイ川が、ウスチクートでBAM鉄道とレナ川が連結しており、両方の街は物流上の重要な結節機能を有している。
道路網は鉄道に沿って整備されているが、一級道路の連邦道といえども未舗装部分が多い。シベリアはあまりにも広大な大地であるため、長距離の自動車輸送は発展していない。自動車輸送はもっぱら街中とその近郊が主体となる。そのため鉄道貨物駅はトラックへの貨物積替え機能を備えている。

図2.東シベリアの輸送ネットワーク図
図2
3.各種輸送モードの実態と課題
(1)モード別輸送実績

ロシア全体の貨物輸送量を2004年実績で見ると、トンベースでは鉄道・パイプライン・自動車・水運の順に多いが、トンキロベースではパイプライン・鉄道・水運・自動車の順となる。
自動車輸送は年々着実に増加を示しているものの、都市間の道路インフラが不十分であるため、長距離輸送にはあまり使用されていないのが実態である。流体輸送のパイプラインを除いて、一般貨物の長距離輸送は鉄道に大きく依存しており、広大なロシアではこの傾向は今後も変わることはないと思われる。

図3.ロシアのモード別輸送実績(2004年)
図3
(出所)運輸政策研究機構国際問題研究所 「主要国運輸事情調査報告書(ロシア)」
 
(2)河川輸送

東シベリアの広大な大地には、大河であるエニセイ川とレナ川及びその支流が網の目のように流れ、人・物ともに重要な輸送路として利用している。貨物の輸送はバージ(約20m×70m)による輸送で、1回の輸送で最大6隻(2行×3列)のバージを連結して輸送できる。
河川のいたるところに港が整備され、特に鉄道との結節地点では貨物保管ヤードや多数の大型クレーンが設備されている。鉄道の線路は岸壁横まで敷設されており、貨車から船舶への積替えはワンハンドリングで実施可能である。河川には橋やダムはほとんどなく、大ロット輸送も容易に行える環境にある。
河川輸送は河川が氷解する5月下旬に始まる。この頃はまだ北の北極海河口部は凍結しており、河口で河川が堰き止められるため中上流部は平時の5~15mも水嵩が増す。この増水を利用して支流の奥地までバージを使った輸送が行われる。10月下旬には凍結が始まるので、1年の内わずか5ヶ月しか輸送できないことになる。冬場には船舶は氷にとざされるが、船舶周りの氷を排除することでドックに入れることなく船舶の修理が行えるメリットはある。
輸送料金は毎年政府が決定しており、一例として、600kmの輸送が1,500RUB/t(2007年)であった。

河川輸送イメージ
(3)鉄道輸送

シベリア鉄道はモスクワ~ウラジオストックの約9,300kmを結び、全線が複線・電化で整備されている。運行列車の約80%は貨物列車である。主な輸送貨物は、石油・石炭・木材・鉄鉱石・アルミ・化学製品などで、貨物量は石油や木材を中心に増大しているが、パイプラインの完成によって石油は大幅に減少する見込みである。
東行きの貨物が主で、実車ベースでは東行き9に対し西行き1の割合となる。1日当たりタンク車1,000両、無蓋車1,000両、石炭車700両、有蓋車200両、自動車輸送車100両が運行している。その他にISO20ft・40ftコンテナを積載したコンテナ専用列車(ブロックトレインは除く)が1日1便運行している。最大貨物重量は70t/両、列車は72両編成で、総重量6,000t/列車となる(日本最大1,300t/列車)。貨車の平均速度は50km/hr、最高速度は90km/hrで、コンテナ列車は1日平均1,000km走行する。
もう1つのBAM鉄道はタイシェット~ソヴィエツカヤ・ガヴァニの約4,300kmを結び、複線化は一部、電化は約1/3の整備状況に留まっている。運行列車の約90%が貨物列車である。石油・石炭・木材など原材料の貨物が多く、コンテナ専用列車は運行していない。
東シベリア鉄道(株)管内では152駅で貨物取扱いが可能であり、貨物駅にはクレーンなど貨物積降設備を有する。荷役は鉄道会社の子会社が実施する。生産財や消費財などの一般貨物は20ft・40ftコンテナを使用して輸送されるのが一般的で、これに満たない場合は小ロット貨物用の2tコンテナが利用される。鉄道運賃や荷役料金は政府が決定しており、荷役料金は品目により200~1,200RUB/t、運賃はイルクーツク~ボストーチヌイの40ftコンテナで約40,000RUBである。
貨物の輸送可能な最大断面形状は高さ4.0m×幅3.25mである。輸送日数はイルクーツク~モスクワで9~14日を要し、トラック輸送の5~6日より劣る。これは駅での編成換え作業の効率が悪いためである。また貨車の老朽化が大きな課題となっている。
現在ロシア政府においては鉄道網の新規整備計画を打ち出している。この計画では現状で飽和状態にあるシベリア鉄道の輸送能力を増強するために、第3シベリア鉄道の建設に乗り出す。また南北方向への支線を大幅に拡大していくが、これは資源開発が目的となるため、基本的には鉱山と幹線を結ぶ路線となる。

図4.ロシアの鉄道整備計画
図4
(出所) ロシア鉄道省「2030年までの鉄道整備計画」
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(4)自動車輸送

東シベリア地域は国土が広くしかも道路があまり整備されていない。そのため、長距離輸送は船舶と鉄道が、近距離(約1,000kmまで)や都市部の輸送および船舶や鉄道が輸送できない場所への輸送は自動車と、ある程度輸送モード別に棲み分けされている。
自動車輸送は大型トラックによる輸送が主流である。荷台寸法はISO40ftコンテナとほぼ同等で、積載重量は約20tである。貨物の申請届出不要の最大許容量は、寸法4.2m(H)×16.5m(L)×3.0m(W)、重量21.5tとなる。大型トラックの運賃は距離制運行払いが一般的で、2007年の相場運賃は、貨物積載時が1.0EUR/t・km、空車回送時が1.0USD/t・kmで、通常は往復分の運賃を支払う。なお、この地域は資源輸送が盛んなため、バン型トラックよりも資機材や木材を運搬する平ボディトラックや石油タンクローリー車が非常に多い。
鉄道とトラックの一貫輸送用として小型の2tコンテナがあるが、このコンテナの貨物駅との集配用に小型の4トン車が使用されている。日本の路線便や宅配便に匹敵する自動車輸送サービスは存在しない。
東シベリア独特の輸送としてウインターロード輸送がある。冬場の厳冬期に河川やツンドラが凍結すると、その表面をブルドーザー等で平らに整地してウインターロードを作り、この冬の道を使用してトラック輸送を行う。この道路は毎年同じ場所に建設するため地図にも表記されている。使用期間は11月中旬から3月中旬までの4ヶ月間であるが、冬場は河川凍結で運航できない船舶輸送に変わる重要な輸送手段となる。
ウインターロード輸送は、人里離れた無人の原野を-30度以下という厳しい環境下で数日通しての輸送となるため、トラック隊列(コンボイ)を組んでの輸送となる。コンボイには燃料・宿泊・飲食(コック)・医療(医師)を備えたトレーラハウスが組み込まれる。このため運賃は非常に高くなり、通常道路の約3倍の運賃となる。主に原野奥地の地下資源採掘サイト(石油、貴金属、ダイヤモンド鉱山等)への輸送となる。

自動車輸送イメージ
(5)航空輸送

東シベリア地域内には約50の空港があり航空路も設定されているが、州都以外の空港は基本的には旅客扱いのみで貨物の取扱いは行われていない。まれに貨物機チャータ便で輸送されることはある。
航空輸送の主力はヘリコプターである。国土が広く空き地も多いため、ヘリ輸送は頻繁に行われている。
ヘリは2機種が主に用いられており、小型のMI-8型機は、外吊り3tあるいは内部搭載4t、巡航速度180km/hr、巡航距離300~350km、料金は1時間当たり60,000RUBである。もう1つの大型機MI-26型機は、内部搭載20t、料金は同120,000RUBである。

航空輸送イメージ
(6)物流倉庫

生産財や消費財などの一般貨物は、国内の工場から全量が直接消費場所(販売店)へ輸送されるため、流通上に在庫する貨物がほとんど存在しない。これは日本のような効率的な物流ではなく、単に生産したら次の場所へ送るという単純な物流のためである。そのため物流倉庫の必要性は現時点ではない。
わずかな保管施設としては船舶・鉄道・トラック間の積替場所(港や駅)で一時保管場として設置されているが、大半は野積場であり、建物がある場合でも工場跡やコンテナを積上げた簡易的な施設となる。

物流倉庫イメージ
4.まとめ

更なる資源開発とともに経済発展が大きく期待される東シベリア地域であるが、最後にこの地域の物流事情を展望する。
河川輸送においては新たな輸送ルートの開発や輸送量の増大は見込めないが、今後も重要な輸送路としての役割は変わらない。鉄道や自動車との結節地点となる港湾では、老朽化したクレーン等の最新機械への代替、保管機能を高めた倉庫設備の充実が計画されている。 鉄道輸送網は大幅に増強される。飽和状態にあるシベリア鉄道を補完するBAM鉄道の全線複線化や第3シベリア鉄道の計画があり、更に永久凍土地帯への線路敷設計画も公表されている。老朽化した貨車100万両の代替や運転速度のアップも計画されている。
自動車輸送は道路インフラ整備に左右される。現在でも主要幹線道路は州道から連邦道へ格上げされて整備が進められている。今後はウインターロードを通年道路として整備する計画も出ており、道路網の充実が図られていく。ただし国土は非常に広いため、距離的にトラック輸送には限界がある。シベリアにおいては自動車輸送と鉄道輸送はお互いに補完し合い、共に発展していく方向にある。
物流上の一番の課題は保管施設がほとんどないことである。現状では都市部にコンテナ倉庫程度はあるものの、細かい仕分けや流通加工は行えず、品質・温度・衛生環境も良いとはいえない。この点については政府も課題認識をしており、鉄道整備計画に合せて貨物駅に直結したロジスティクスセンター建築構想を打ち出している。生産財や消費材などの一般貨物を対象とした物流拠点インフラの整備が進むことになる。これに合わせ、現行の輸送業者がセンター業務を手掛け、トータル物流業務を提供することが期待される。
物流インフラの整備と機能の強化は、現行の生産されたものが送り込まれるだけの単純な物流から、売れるものを売れる場所へ売れる量だけ供給するロジスティクスの実現をもたらすことになろう。シベリア地域の保管・仕分機能の充実と物流事業者の高度化が、日本製品や産品の新規参入および輸出を増大させ、両国の貿易拡大につながっていくことを期待したい。

(担当:ロジスティクスコンサルティング部 担当部長 山口 宗明)

発行|2009年5月28日
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