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ロジスティクスレポート No.02

違法駐車取締り強化と都市内物流対策について
~改正道路交通法の施行に向けて~

  • 本年6月、改正道路交通法が施行され、違法駐車の取締り強化に向けて放置車両に対する使用者責任の拡充や放置車両取締り関係業務の民間委託が実施される。
  • 東京都を例にとると、違法駐車台数に占める営業用トラック(事業用貨物車)の比率は11.2%に過ぎず、乗用車(56.6%)、自家用トラック(32.3%)の比率が圧倒的に高くなっているが、都市部において貨物車が駐車できるスペースが絶対的に不足していることから、同法の運用いかんによっては、都市の営みに不可欠なトラックによる集配活動が大きな制約を受けるなど多くの問題につながることが懸念される。
  • 都市内物流対策については、昨年11月に閣議決定された「総合物流施策大綱」においてハード、ソフト両面からの対策の必要性が取り上げられている。同法の改正はこの施策大綱の方向に沿ったものであるが、実施にあたってはハード・ソフト相まった総合的かつ整合性ある都市内物流対策としてきめ細かく取り組んでいく必要がある。
  • トラック事業者においては、今回の法改正の趣旨をドライバーに対し十分徹底を図るとともに無秩序な路上駐車とならないようさまざまな努力、工夫が求められる。行政側においては、トラックベイ・パーキングメーターなどの都市内インフラ整備の促進・加速化の努力、貨物車の業務の公共的・社会的機能を十分勘案した運用が求められる。また、都市内物流問題全般に関する一般市民の理解、認識が必要であり、トラック業界、荷主企業、行政等が幅広く連携し、コンセンサスの形成に向け、努力していく必要がある。
1.改正道路交通法(本年6月施行)の概要

現在、都市部においては、依然として交通事故や交通渋滞による安全問題が深刻な状況にある。特に違法駐車の常態化は、その一因となっており、違法駐車の抑止に対する社会的要請が強くなっている。現状では、駐車取締りに投入できる警察力に限界があることから、道路交通法の改正(平成16年6月9日公布)により違法駐車対策が強化され、本年6月までに施行される。

今回の道路交通法の改正により強化される違法駐車対策は「良好な駐車秩序の確立と、警察力の合理的再配分」(警察庁ホームページより)を目指すものであり、大きく分けて二つの柱を内容としている。

図-1 新制度における放置駐車違反取締り手続きの流れ
図-1
[出所:警視庁ホームページ]

(1) 放置車両についての使用者責任の拡充
車両の使用者の責任を強化し、放置駐車違反について運転者個人が反則金を納付する場合を除き、公安委員会は、車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ずることができることとする。

(2) 放置車両取締り関係業務の民間委託
放置車両の確認と標章の取付けを、警察官又は交通巡視員に行わせるほか、民間に委託することができることとするなど、違法駐車取締り関係業務の民間委託の範囲を拡大する。

なお、放置車両とは、「車両が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にある車両」をいう。

この制度を施行するにあたり、警察庁において以下のようなポイントで準備が進められている(警察庁ホームページ)。

  • 悪質・危険性、迷惑性の高い違反を重点としたメリハリを付けた取締りを従来以上に強力に推進する。
  • 確認事務の民間委託を行う警察署においては、地域住民の意見、要望を踏まえた上で、重点的に取締りを行う場所、時間帯などをめ  た取締り活動ガイドラインを策定、公表する。
  • 短時間駐車の違反車両に対する取締りについて、放置車両であることが確認できた車両については、駐車時間の長短にかかわらず確認標章の取付け対象とする。

違法駐車対策の強化は、営業用トラックの現場からみると、集配時の駐車違反の運転者が未出頭などで責任が追求できない場合、車両の使用者すなわち運送事業者に責任が及ぶことになる。また、違法駐車取締り関係業務の民間委託の導入地域は、ガイドラインで示された地域で重点的に実施(例えば東京都では12行政区43署で実施)されるが、実施地域では、運転者が車を離れて直ちに運転することができない場合等に、現行より厳しい取締りを受け,運用いかんによっては、多くの問題につながることが懸念される。

2.都市内路上駐車の実態と問題点

東京都内の違法駐車台数に占める営業用トラック(事業用貨物車)の割合は、11.2%に過ぎず、乗用車(事業用・自家用計56.6%)や自家用貨物車(32.3%)の比率が圧倒的に高くなっている。

また、都心部においては、貨物車が利用できるトラックベイや貨物車優先パーキングメーター等の駐車スペースの確保が一部進められているとはいえ、十分機能しているとはいえない実態にある。そのため、日常の物流業務を担う貨物車が駐車できるスペースは絶対的に不足しており、路上駐車が発生せざるを得ない状況にある。

また、地方自治体による建築物への荷捌き駐車場の付置義務条例がある地域でも、既成の建築物及び小規模の建築物には適用されないことから、特に既成市街地では、建築物内での荷捌き作業の実施は極めて困難な状況にある。さらに、宅配便の集配が貨物の積卸とはみなされない場合、運用によっては、すべて違法駐車とされる可能性もある。

大手宅配業者の一部では、都心の一部で運転者と助手の2名体制で集配を行ったり、商店街や繁華街に集配のためのデポを設置し、ここを拠点に台車を使用して集配する仕組みを作り、車両走行と駐車を削減することに取り組んでいるところもある。

しかしながら、こうした方策が採用できるところは、極めて限られていることから、大半は、「迷惑にならないように留意して路上に駐車している」、「できる限り駐車時間を短時間で済ますような積み方を工夫している」といった方法で対処しているのが実態である(ドライバーへのヒアリング結果)。

図-2 東京都内の瞬間違法駐車台数の車種別割合
図-2
3.都市物流問題の根源

市民の日常生活は、物流活動によって支えられている。なかでも、都市内における物流活動の端末部分(貨物や荷物の配送・集荷)は、その大半がトラック輸送により行われている。一般道路における平日昼間交通量の約35%を貨物車(トラック)が占めており(国土交通省「平成11年度道路交通センサスの概要」より)、いまやトラック輸送なしでは、我々の日常生活、ひいては我が国の産業活動や経済活動は成り立たず、都市活動も機能しない実態にある。

そもそも道路は、自動車にとって通行の場であるとともに、沿道で営まれる生活や事業とのアクセス上不可欠な駐停車が発生する。従って、都市機能を維持していくためには、その双方を両立させることが必要といえる。しかし、都市活動が拡大していくにあたり、その両立が困難になっているところに、都市内物流問題の根源がある。

都市内物流対策への取り組みは、一層重要性を増している。昨年11月に閣議決定された「総合物流施策大綱2005-2009」の「今後推進すべき具体的な物流施策」においても「貨物交通マネジメントの推進」として「都市内物流の改善」が指摘されている。そのためには、ハード・ソフト両面からの対策が必要であり、路上荷捌き駐車施設等の設置と適切な運用、きめ細かな駐車規制、違法駐車の取締り等の施策が具体的に示されている。

今回の道路交通法の改正は、この「物流施策大綱」の方向に沿った具体策の一環といえるが、同法の運用行かんによっては都市内の生活や平常の営みに不可欠な貨物車(トラック)の活動が大きな制約を受けることになりかねない。現状のままでトラックへの取締まりだけが強化されれば、トラックと建物の間のいわゆる「横持ち作業」の増加、長距離化、長時間化によるドライバーへの過重な負担、配送遅延、集配コストの増大等の問題点が惹起される可能性がある。

4.違法駐車取締り強化への対応と課題・要望

放置車両取締り強化への対応として、基本的にまずトラック事業者側が改めてドライバーに対して、法令・ルール遵守等の徹底を図る必要があることはいうまでもない。また、宅配便等の集配作業、引越等の積込み・取卸し作業等の実施にあたっては、一般市民への十分な配慮、迷惑を最小限にする工夫、マナーの徹底等を図らなければならない。

また一方で、都市内物流の現状からすると、トラック事業者側だけの努力・工夫にも限界があることから、取締りの強化と併せて行政側からのトラックベイ・パーキングメーターなどの都市内インフラ整備の促進・加速化の努力、ハード・ソフト両面からの整合性ある対策の実施、貨物車(トラック)の業務の公共的・社会的機能を十分勘案した「除外路線」、「除外時間」、「除外業務」の設定などの具体策の工夫・実施が望まれる。なお、特に民間委託される場合は、安易な運用とならないようきめの細かい対応が求められる。

このような整合性ある対策の実施に向けては、都市内物流問題全般に関する一般市民の理解、認識が不可欠であり、トラック業界、荷主企業、行政等が幅広く連携し、コンセンサスの形成に向け、努力していく必要がある。

(担当:経済研究部)

発行|2006年1月31日
株式会社 NX総合研究所(発行当時 株式会社 日通総合研究所)
〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町2番地

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